最近草食系男子が人気なのだそうだ。草食系ど真ん中にいる僕にとっては喜ばしい傾向だけど、逆に言えば肉食系の女子が増えているってことでもあるんだろう。僕の彼女は完全に肉食系女子だ。食物連鎖で言うところの一番上の小さな三角のところに君臨している人だと思う。僕はもちろん一番下の台形、量が多いだけの食われる側だ。そんな僕らがどうして付き合っているのか、ときどき不思議に思うことがある。彼女曰く、僕と一緒にいると気を使わなくてラクなのだそうだ。
昔は彼女と同じく一番上の三角にいるような男とつきあったこともあるらしいけれど、お互い自己主張が強すぎて、消耗するだけの関係だったそうだ。その点僕は彼女の望みを大概断らないから彼女の主張はほぼ通るし、むしろ優柔不断で煮え切らない部分を彼女がバッサリ決めてくれるので僕にとっても本当に助かっている。
告白も彼女から、食事や時間を決めるのも彼女だし、ウェイターとのやり取りだって殆ど彼女がする。時々男としてこれでいいのか!?と疑問に思うこともあるけれど、僕はしがないサラリーマン、彼女は高級取りの建築士であることも、僕らの関係に影響していると思う。彼女のことは好きだけど、彼女の前にでるとどうしても引け目に感じてしまうのは否めない。
だけどこの前、男として結構ヘコむことがあった。デートの帰り際、彼女から合鍵を渡されてしまったのだ。僕も自分のアパートのカギを渡そうと思ったこともあったけれど、それって彼女を縛ることになるんじゃないだろうかと余計なことを考えてできずにいたのだ。それにしても先に彼女から合鍵を渡されてしまうなんて、なんて僕は情けないんだろう。彼女から受け取った合鍵を眺めながら、プロポーズこそは僕からしよう、と強く誓ったのだった。